前回記事、「日本のMTBの新しい日の出なのか」の続きです。
2022年3月1日静岡サイクルフェスタ、トレーニングウィーク @伊豆修善寺サイクルスポーツセンター、についての後編です。

続けては桜吹雪にやってきました。
真横から見ると、噂ほどは高くないですね。ラダーがあるのでゆっくりと降りるのは簡単そうです。清水選手のアドバイスを受けながら、それぞれ慣熟していきました。皆んなのタイヤは程なくしてラダーから浮いてきます。ゆっくり抑えても飛ばない様にする方が逆に難しいぐらいです。
いや本当に、写真では高く見えますが、落差は1.5m。ラダーが埋めている距離が2m程度、ちょうど自転車1台分です。遠いようで、でも実際に岩の上に立つとそんなに着地が遠く感じないんです。
最初は皆んな、あのマチューが大転倒したというイメージに恐る恐る挑戦していたのですが、どうやらココは楽しいジャンプ台じゃあないかというイケイケの雰囲気に変わっていきました!

この「桜吹雪」はアプローチは平坦で広々としています。飛び出しの岩の面は自転車一台分程度の長さがある踏み切り易い、いわゆるライナー系で緩めの角度です。着地は岩ですが、その先は広い芝生で充分な距離の“バックサイド”です。
で、着地した勢いのまま登り返すとすぐ、並走する舗装路に上がれます。本来はそこから次のセクションですが、そこを少し戻ればあっという間にスタート地点に戻れます。
…コレは絶好のジャンプ練習場ですね。
写真の少年は地元でダウンヒルやパークなどを練習しているそうです、恐らく小学生かと思われます。そしてひょっとしたら彼が今回のイベント参加者の中での最長不倒距離のジャンプを決めたかもしれません。清水選手達のデモンストレーションや彼は岩を越えて悠々と芝生まで飛んでいっていました。
なお私は最長不倒に挑戦するも、芝生まで届いたかもでしたが無念の転倒!お尻が2つに割れるかと思うぐらい下まで滑りましたが、大丈夫でした!
コケてもなお、本当に良く出来たジャンプ台だなあと思う材料を手にした次第です。
なおなお余談にて、時速20km/hもあれば前輪がどうやっても岩の着地に届く塩梅でした。オリンピックの時のマチューは恐らく1周目、ピドコックの前でスピードを抑えつつ、飛び出す前に自ら跳ぶ“プレジャンプ”らしき高等技術を仕掛けたので、前輪をわざわざ岩の着地面の手前に刺せてしまったんだという、1つの推測です。

続けては名前こそついていませんが、オリンピック女子レースで重要な局面の1つとなった「ウェーブ」セクションです。とても良く出来たデュアル・パンプトラック。
このパンプは非常に走り易くて、本当に速い!
大丈夫か?と本能的に自問する程のスピードまであっさり加速します。↑の写真には2つまとめて飛び越しか、飛ばずに舐めるかの選択をすべきコブ、所謂ダブルが2連続いてでありますが、いきなり飛び越せてしまいました。今までどこの練習でも飛べたこと無いのに。

からのGを味わうバーム。その味わえるぐらいのスピードで通過出来ると…最後の岩壁を、

ギューんと登り返せます。女子レースではココで失敗したポーリーヌ選手が登れなくなり、金メダル争いから脱落していったシーンがありました。
右のラインは2つあるダブルをそれぞれ舐めて抑え目のスピードで十分でした、岩壁の上で漕ぎ足せば登り切れます。
左ラインはナカナカ難しく、ダブルのコブを舐めてからだとスピードが足りませんでした。逆に飛び越しつつ上手にバームで加速出来ればメチャクチャ速い!です。
ココでも自分はやらかしてしまいましたが、何とか両ラインを登り切りクリアする事が出来ました。
なお清水選手は左ラインを軽々と、なんなら岩壁の上でジャンプを決める余裕のあるスピードでクリアしていました。
コツを聞いてみると、“ウィップ”を掛けてるらしいという事が分かりました。左ラインの2連ダブルの着地は右斜め方向に曲がっていて、正直に真っ直ぐ抜けると着地で左側の壁に突っ込んでしまいます。自分はしてしまいました。
とはいえ飛び出しで斜めに踏み切れ、というのも難しい話です。着地後に曲げてクリアしたのですが、余りスピードは維持出来ません。清水選手によると“ウィップ”は車体を曲げながら飛び出すやり方や、空中で腰で捻る方法などあるそうですが、要は着地で右へと車体が走る様に斜めにしていたらしい。そうか斜めに着地してイイんだ!目から鱗、飛び出したらウィップ。
さっきのチョップスティックス2段目の着地でも、斜め着地はアリだよなあ。
ここまでが午前の中級?クラス、結局ほぼ皆んながクリア出来ました。

続く午後は井出川選手による上級クラス。天候が崩れ、雨が近付いて来ています。ロックセクションがまさかのウェットに変化中。
状況を見て無理せず判断しましょうと、まずは「天城越え」を再度、今度はセクション全体での攻略です。
いい写真を撮り損ねたので未掲載ですが、実はこの天城越えにはラダーでサラッと降れる桜ドロップよりヤベードロップが普通にあるのです。が全員飛びました。午前の練習では飛べていなかったのですが、皆んな今日一日の内に進化しています。
そして「枯山水」
当初ここと「桜吹雪」は難所の為今回使用されないかもと聞いていたのでビビっていたのですが。ラインをアドバイスしてもらえばむしろ余裕でした。割愛。

本当にヤベーのは「浄蓮の滝」だったのでした。
写真や放送で見ていた通り、パッと見ると何処がコースかすら分かりません。井出川選手らもこんなのをXCバイクでイくのはヤバいですね!とのこと。
そして普通にウェットコンディション。2箇所程あった重大な核心はキャンセルでデモンストレーションのみ。下部の3連岩越えに挑戦です。ウェットの岩場なので皆んなが無理はせず、それでも概ねクリアーと相成りました。

以上で終了。この伊豆オリンピックMTBコースの2/3に挑戦した程度でしたが満腹です。まずは楽しかった。
写真で見たり、コースを俯瞰して見るとヤベー!の連続でしたが、素直な下見と乗車技術の組み合わせで8割はクリア出来る、という感想です。近年のCJコースを全乗車でクリア出来るなら問題無いと感じました。特に菖蒲谷がイケれば全くOK。
登りに関しては全体を通しての1周回をしていないので言い切れませんが、国内のレース、富士見のリフト下の激坂や八幡浜の桜坂、奴隷坂とそう変わらないか緩い?かも。広くて登り易い。改めて朽木は異次元だなー。体重78kgの自分は超苦手です。よりインターバルなこの伊豆ならまだ誤魔化せるかも。
また、実際のレース心拍でコレらの難所を連続で熟せるか、は選ぶラインの難易度を落とせばイケるかな。
まだまだ名の無い何気ない繋ぎの部分にも盛り沢山。普通にGなバームが幾つもあり、伴う登り返し。狭くて片斜面での超落ちるドロップなど。それらも結局皆んな普通にクリアしていたようですが。

この伊豆MTBコースは、所謂フローな要素がしっかり詰まっています。それぞれの岩なども一つ一つ厳密に配置された人工コース。まるで白馬岩岳とかフジテンみたいなMTBパークの、クロスカントリー版と捉えられます。
競技用の筈なので勿論ただ簡単では無いとは思うのですが、日本の自転車業界側が萎縮する程の困難では無いぞ。むしろ欧米のアクションスポーツ界が育んできた、カッコ良くて楽しい、結果的に怪我もし難いというノウハウが詰まったenjoyなコースであって、それが突然日本国内に降って湧いている幸運なんだと言いたいです。
講習中、井出川選手が何度も“物理ですからね”と言われていて、確かにそうだなと。この難解なコースも物理的にカッコいいラインが隠されてデザインされています。造成を担当したおんちゃんらあともお話出来ましたが、何度もやり直しさせられたと語る程のこだわりが詰まっています。
天然の地形や岩の配置を元にする国内のレースでは、コース設定に制限が多く想定スピードが低目で、降りで抜くのが難しいコースが多い印象です。スタート後の一列棒状が段々と千切れていく単調な展開になりがち。欧米発想の伊豆でならサイドバイサイドで競い合いながら選手が次々に観客の前を通過していく迫力あるレースになりそうだ。
“自転車に乗るスキル”がある選手に対して明確なアドバンテージが得られる設計。自転車をスムーズに走らせる、自転車に上手に乗る、というのはそもそも乗り物としての基本ですからこういったレース傾向が自転車文化の普及の意味でも良いんじゃない、とは思う訳です。
体重が重い自分だから、だけでなく恐らく皆んな、どうせなら楽しいコースで苦しい思いする方が、レースするにも面白いですよね?!と重ねて思う訳です。
そういえばこのトレーニングウィーク初日には、攻め攻めの参加者が集まっていました。かなり楽しい思いをしました。ありがとうございます。今思えば濃いメンバーだったな…
とはいえこの日の方々だけが特別だった事もなく、他の日の参加者の方々もバンバン、クリアしていた様です。自分、クリアするだけなら少々自信がありましたが、ちょっと悔しいぐらいです。なんだ皆んな出来るんだなと。
改めてこの2022年秋の公認レース開催は、検討はされているようです。是非チャレンジから参加出来る形式を、超希望します。
その時は皆さん是非、ビールキャンプで遠征と参りましょう。
